こんにちは、三国志きっかけで歴史小説好きになった貧困男子です。
「歴史小説読んでみたいけど何読もうかな?」という方向けに、おすすめの歴史小説をランキング形式でご紹介していきます!
面白いのがあれば随時追加していくので、「約」30にしています。(2018/2/25時点では27です)
日本、中国、ヨーロッパと地域ごとに分けて紹介していきますね。
お気に召すのがあれば嬉しいです。
※僕の趣味がこれでもかって位全面に出てるので、かなり偏ってます。
【日本】おすすめ歴史小説ランキングTOP6!
1位「永遠の0」百田尚樹
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
※永遠の0 (講談社文庫)より引用
太平洋戦争期を描いた小説。
「著者が経験してきたことを描いてるのか?」と感じるほどのリアリティに圧倒され、そして物語へとどんどん引きずり込まれていきます。
いかに当時が過酷な状況であったのか、今がどれほど恵まれた環境であるのか、痛切に感じさせられます。
そして、そんな環境下でも必死に生きようともがく人々…
その姿に胸をうたれない人はいません!
これほど心をえぐる作品は本当に稀です。
戦争関連の本は中々とっつきにくいですが、是非この本だけは読んでみて下さい。
2位「破軍の星」北方謙三
建武の新政で後醍醐天皇により十六歳の若さで陸奥守に任じられた北畠顕家は奥州に下向、政治機構を整え、住民を掌握し、見事な成果をあげた。また、足利尊氏の反逆に際し、東海道を進撃、尊氏を敗走させる。しかし、勢力を回復した足利方の豪族に叛かれ苦境に立ち、さらに吉野へ逃れた後醍醐帝の命で、尊氏追討の軍を再び起こすが…。一瞬の閃光のように輝いた若き貴公子の短い、力強い生涯。柴田錬三郎賞受賞作。
※破軍の星 (集英社文庫)より引用
日本の南北朝時代を扱った小説で、主人公は北畠顕家。
恐ろしく知名度はありませんが、間違いなく南北朝時代の英雄です。
室町幕府を創設した足利尊氏を完膚なきまでに打ち破る等、動乱の時代にまるで彗星のごとく、短く、誰よりも輝いた武将でした。
そんな顕家が存分に才能を発揮する様、人を魅了していく様、そして夢を抱いていく様は、読んでいてワクワクが止まりません。
だからこそ終盤、絶望的な状況でも前を向いて戦う顕家の姿に、読んでいて切なくなってしまいます。
少々物足りないといいますか、もっと続きを読みたい、顕家に生き続けて夢を実現して欲しい、と思わず願ってしまいます。
ですが、これだけ短く太い生涯だったからこそ、これほどまでに輝きを放つのかもしれません。
一度手に取ると、最後まで一気に引き込まれます。
3位「絶海にあらず」北方謙三
京都・勧学院別曹の主、藤原純友。坂東への旅で若き日の平将門との邂逅を経て、伊予の地に赴任する。かの地で待っていたのは、藤原北家の私欲のために生活の手段を奪われ、海賊とされた海の民であった。「藤原一族のはぐれ者」は己の生きる場所を海と定め、律令の世に牙を剥く!渾身の歴史巨篇。
※絶海にあらず〈上〉 (中公文庫)より引用
平安時代に起きた「藤原純友の乱」を描いた小説。
当時、絶頂を極めていた藤原北家の一員(傍流)として飄々と暮らしていた純友が、自分の生き方を見つける様が。
そして、その生き方に賛同する仲間が集まり、その夢を叶えていく様が。
この小説にはそんな純友の見事な生き様が描かれています。
最も重要な「なぜ反乱を起こしたのか?」という部分が、純友の心理、そして当時の社会情勢を踏まえ、非常に説得力のある描写がされています。
説得力がありすぎて、これが史実だったんじゃないかと思ってしまう位。
後味もスッキリでとても読みやすいですよ。
4位「昭和史」半藤一利
授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博した「昭和史」シリーズ戦前・戦中篇。日本人はなぜ戦争を繰り返したのか―。すべての大事件の前には必ず小事件が起こるもの。国民的熱狂の危険、抽象的観念論への傾倒など、本書に記された5つの教訓は、現在もなお生きている。
※昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)より引用
日本史の授業等でも、あんまり近現代ってやらないですよね。
この時代ってイマイチわかんないままだったんですが、その時代を一気に理解できる良書です。
語り口調で書かれているので、非常に読みやすいです。
同じ日本人として、読んでいるとどこか悔しい、やるせないような思いにさせられます。
ちなみに、結構著者の価値観が全面に出てくるため、人によっては拒否反応が出るかもしれないのでご注意を。
5位「のぼうの城」和田竜
時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった―。
※のぼうの城より引用
石田三成率いる2万の豊臣軍に対し、忍城には500人、しかも城主は「でくのぼう」と呼ばれる長親。
そんな絶望的な状況ですが、小説全体に明るさがあって非常に読みやすいです。
また、そんな「でくのぼう」な主人公が勇気と知恵であっと驚くような活躍をする様は、痛快そのものです。
歴史小説っぽい重々しさはなく、エンターテインメント性の高い小説。
さらっと面白い歴史小説が読みたいという方におすすめです。
6位「楠木正成」北方謙三
ときは鎌倉末期。幕府の命数すでに無く、乱世到来の兆しのなか、大志を胸にじっと身を伏せ力を蓄える男がひとり。その名は楠木正成―。街道を抑え流通を掌握しつつ雌伏を続けた一介の悪党は、倒幕の機熟するにおよんで草莽のなかから立ち上がり、寡兵を率いて強大な六波羅軍に戦いを挑む。己が自由なる魂を守り抜くために!北方「南北朝」の集大成たる渾身の歴史巨篇。
※楠木正成〈上〉 (中公文庫)より引用
南北朝時代(室町幕府が出来る直前ね)の軍略家として有名な楠木正成を描いた作品。
いわゆる南朝側の「悲劇の忠臣」として人気のある武将です。
この正成を、北方先生は「ただ後醍醐天皇に忠実な武将」ではなく、「自らの夢を叶えようとした男」として描きます。
夢を抱き、鎌倉幕府倒幕の兵を挙げ、さんざんに幕府軍を振り回した正成の姿は、見ていて痛快そのものです。
しかし、正成の夢は潰えます。
物語の終盤は正成が夢に破れ、絶望する様が描かれます。
少し悲しい物語です。
「大きすぎるほどの夢を抱き、そのために命を燃やし、そして絶望してしまった男」として、これでもかという程に正成の内面をえぐった作品です。
7位「上杉鷹山」童門冬二
灰の国はいかにして甦ったか。九州高鍋の小藩から養子に入り、十七歳で名門上杉家の藩主の座についた治憲は、自滅か藩政返上かの瀬戸際にある米沢十五万石を再建すべく、冷メシ派を登用し改革に乗り出す。藩主や藩のために領民がいるのではない、との考えのもとに人びとの心に希望の火種をうえつけてゆく…。
※小説 上杉鷹山〈上〉 (人物文庫)より引用
江戸時代中期の大名で、米沢藩の9代藩主。
家臣数が過剰で、破たん寸前だった米沢藩。
既得権益層に阻まれながらも、一貫した姿勢で改革を断行し、藩財政を改善させた米沢藩中興の祖。
そんな上杉鷹山の激動の生涯を描いた小説。
上杉鷹山の生き方を見ていると、自分の生き方について考えさせられます。
それくらいの感動と教訓を与えてくれる生き様です。
改革が出来てハッピーエンド…ではなく、改革実行後の苦しみもじっくり描いているのも本書の魅力です。
うちの社長もこの本読んでくれないかなぁ
【中国】おすすめ歴史小説ランキングTOP12!
1位「水滸伝」「楊令伝」「岳飛伝」北方謙三
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた―。世直しへの強い志を胸に、漢たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて闘う。彼らの熱き生きざまを刻む壮大な物語が、いま幕を開ける。
※水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)より引用
108人の梁山泊の英傑が、腐敗した宋王朝打倒のために戦うという物語です。
それを北方先生流にアレンジしたもので、「水滸伝は全19巻」「楊令伝は全15巻」「岳飛伝全17巻」の合計51巻という超長編。
これがめちゃめちゃ面白いんですよ!
面白すぎてもう読み始めたらとまらない。
主な味方だけでも108人出てくるんですが、一人一人「どんな人物なのか」「なぜ戦うのか」丁寧に描かれているんですよ。
恐らく水滸伝19巻を読めば、それで108人全員の名前と特徴が言えるようになっているはずです。
それだけ各々の個性が強くて魅力的!
魅力的な仲間が徐々に集まっていくき、宋王朝を揺るがす存在にまで成長していく様は、読んでいて引き付けられるなんてもんじゃありません!
超長編ですが、読んでいて全く退屈しません。
例のごとく戦争描写も魅力的なんですが、この水滸伝のすごいところは、兵站の部分まで描いているところ。
軍隊を維持するにはお金が必要ですからね。
でも、梁山泊は反乱軍なので、領土がありません。
じゃあどうやって宋王朝を倒すほどの軍隊を集め、養うだけのお金を手に入れるのか…
そんなところまで描写してあるんですよ。
本当、目に浮かぶほど描写が細かい!
登場人物だけじゃなく、梁山泊全体が魅力的でたまりません。
僕もこの時代に生まれて梁山泊に行きたかった…
2位「三国志」北方謙三
時は、後漢末の中国。政が乱れ賊の蔓延る世に、信義を貫く者があった。姓は劉、名は備、字は玄徳。その男と出会い、共に覇道を歩む決意をする関羽と張飛。黄巾賊が全土で蜂起するなか、劉備らはその闘いへ身を投じて行く。官軍として、黄巾軍討伐にあたる曹操。義勇兵に身を置き野望を馳せる孫堅。覇業を志す者たちが起ち、出会い、乱世に風を興す。激しくも哀切な興亡ドラマを雄渾華麗に謳いあげる、北方〈三国志〉
※三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)より引用
北方三国志の一番の魅力はなんといっても、人物描写の深さ!!
三国志のただでさえ魅力的な武将達が、北方先生の手によって、その個性と魅力にさらなる磨きがかかっています。
「諸葛亮孔明」は完璧超人のような働きをしますが、北方三国志ではとても人間的に悩む人として…
「張飛」は、劉備と関羽を兄としてひたすらに慕い、汚れ仕事や兵士に嫌われる仕事を率先して行い、奥さんにはまた別の愛情を一心に注ぐ、とても愛情深い武将として…
一人一人の心情まで細やかに、そして力強く描かれています。
だからこそ、三国志って蜀が正義の味方っぽく、魏が悪者っぽく扱われてしまいがちですが、魏の武将達も呉の武将達も思わず応援したくなるほど全ての武将が魅力的です。
もう何回読み返したかわかりません。
三国志初めての方から、三国志もう知ってるって方まで、どんな方でも楽しめます!
3位「楊家将」「血涙」北方謙三
『水滸伝』『楊令伝』に脈打つ楊家の魂、ここにあり!
宗建国の英雄・楊業とその一族。過酷な運命のなかで光り輝き、青面獣楊志、楊令にも語り継がれた漢たちの熱き闘い。
※楊家将〈上〉 (PHP文庫)より引用
宋建国の英雄である楊一族(楊業と7人の息子)の物語。
もうめちゃめちゃ面白い。
男としての生き様が見事に描かれていて、戦争描写も手に汗握るものばかり。
楊一族もそれぞれが非常に魅力的で、感情移入が止まりません。
ただ、ちょっと悲しい物語なんです。
感情移入しすぎた結果、読み終わった後はやるせない気持ちでいっぱいになります。
読み返したりすると、すでに結果がわかっちゃってる分、読んでてつらくなっちゃいます。
ハッピーエンド好きにはおすすめできませんが、面白さは抜群です。
「楊家将」の続編が「血涙」です。
4位「三国志」宮城谷昌光
三国志は主に、「演義」(劉備とか孔明が主人公で結構脚色されてるやつ。吉川栄治先生の小説や横山光輝先生のマンガとか)と呼ばれるものが日本では有名です。
しかし、実は正しい三国志は「正史」の方。
これまでにも正史を基にした三国志小説はいくつか発売されているのですが、宮城谷先生の三国志はその詳細さと正確さにおいて他を圧します。
「正しい三国志を知りたい!」という方には、宮城谷三国志がおすすめです!
三国志の小説と言えば「後漢末期の黄巾の乱」から描いている作品がほとんどの中、宮城谷三国志はなんと「後漢中期」から描かれています。
そのため、黄巾の乱に至るまでの後漢王朝が混乱ぶり(なぜ宦官があれほどの権力を握るようになったのか等)がよくわかります。
また、登場人物の評価が今までの三国志と違うことが多いので、有名武将の意外な一面を知ることが出来たり、名前も知らないような脇役武将が意外に活躍してたりと、三国志をすでに知っている人でもすごく楽しめる小説ですよ。
ただし、1巻は正直お世辞にも読みやすいとは言えないので、途中で諦めないで下さいね!
5位「春秋戦国志」安能務
中国故事名言の9割以上を産んだとされる春秋戦国時代はまた、国家形態の原型が造られ、諸子百家などすぐれた思想家を輩出させた、世界的に稀有な時代でもあった。その550年を軽妙に綴る出色の歴史物語。本巻は東周王朝成立から、管仲、鮑叔が大活躍する斉桓公の「覇王時代」までを描く。(全3冊)
※春秋戦国志 (上) (講談社文庫)より引用
全3巻で、中国の春秋戦国時代(東周~秦の中国統一まで)を描いた小説。
有名なエピソードは全て入っているし、読みやすい語り口と構成になっているので、全くこの時代を知らない人でも一気に詳しくなれます。
中国の歴史に興味がある方なら、是非読んで欲しい隠れた名作です。
なぜか序盤だけ軽妙な掛け合いがあって、明らかに一番筆がのっています(中盤には消えて、以後そのノリは復活しない)。
個人的には、序盤のノリのまま最後まで走り抜けて欲しかった…
6位「史記 武帝紀」北方謙三
匈奴の侵攻に脅かされた前漢の時代。武帝劉徹の寵愛を受ける衛子夫の弟・衛青は、大長公主(先帝の姉)の嫉妬により、屋敷に拉致され、拷問を受けていた。脱出の機会を窺っていた衛青は、仲間の助けを得て、巧みな作戦で八十人の兵をかわし、その場を切り抜けるのだった。後日、屋敷からの脱出を帝に認められた衛青は、軍人として生きる道を与えられる。奴僕として生きてきた男に訪れた千載一遇の機会。匈奴との熾烈な戦いを宿命づけられた男は、時代に新たな風を起こす。
※史記 武帝紀 1 (時代小説文庫)より引用
漢の領土を最大にした武帝と、その周辺人物を描いた小説。
北方小説特有の、まるで現場にいるんじゃないかと思われるようなリアルな戦争描写、男らしい生き様はしっかりと描かれているんですが、割と独特な立ち位置の作品。
というのも、動乱期ではなく、平和な「漢」という盤石な国家がある時代なので、思うさま才知を伸ばして活躍して…なんてことが難しい時代です。
あんまり目立つと皇帝様に目を付けられちゃいますからね。
組織の中でどうやって生き延びていくかという、官僚的な思考で動く男が多いのです。
そのためか、小粒な人物が多いように思えてしまうんです。
ただ、そんな中でも自分の生き方を貫こうと男達は戦っているので、しっかりと輝きを放っています。
ある意味、自分の生き方を貫くのは動乱期よりも難しいのかもしれません。
そのあたりがじっくりと描かれていて、初見では「あれ?そんなに面白くない?」と思われた方も、2回、3回と読んでいくと、その面白さがじわじわと感じられると思います。
7位「晏子」宮城谷昌光
強国晋を中心に大小いくつもの国が乱立した古代中国春秋期。気儘な君公に奸佞驕慢な高官たちが群れ従う斉の政情下、ただ一人晏弱のみは廟中にあっては毅然として礼を実践し、戦下においては稀代の智謀を揮った。緊迫する国際関係、宿敵晋との激突、血ぬられた政変……。度重なる苦境に晏弱はどう対処するのか。斉の存亡の危機を救った晏子父子の波瀾の生涯を描く歴史巨編。
※晏子(一)(新潮文庫)より引用
春秋時代の「斉」の国の貴族である「晏弱(父)」と「晏嬰(子)」の親子を描いた小説。
1~2巻では父の「晏弱」が、苦難に立ち向かい、才覚と人望で道を切り開いていく姿が描かれています。
その苦難にも立ち向かう姿にはハラハラさせられ、その智謀を発揮する様にはワクワクさせられます。
「晏弱」の激動の生涯が活き活きと描かれています。
子の晏嬰が主役となる3~4巻は、戦争で活躍をしたといったような派手な話はほとんど出てきません。
武に優れていた晏弱とは異なり、晏嬰はそもそも身長が著しく低く、武よりも文(内政)に重きを置いた生き方をします。
ですが、全く退屈をすることはありません。
晏嬰が自らの生き方を貫くために、常人には真似のできないほど激しい戦いを繰り広げる様が、鮮やかに描かれています。
その様は、「管仲」と並び称されるほどの名宰相だと称えられるほど魅力的なものです。
そんな晏親子の生涯が描かれた「晏子」、めちゃめちゃ面白いですよ。
8位「楽毅」宮城谷昌光
古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。人が見事に生きるとは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。
※楽毅〈1〉 (新潮文庫)より引用
戦国時代に「燕」で活躍した楽毅を描いた小説。
前半は、大国「趙」からの侵略に、「中山国」宰相の嫡子として、楽毅が悪戦苦闘します。
知恵を絞り、大軍を迎え撃つ楽毅の姿に、思わず手に汗握ってしまいます。
前半の副主人公といってもよい趙の武霊王も魅力的です。
目的に向かって合理的に最短距離を通ろうとするタイプで、わかりやすいところが個人的には好きでした。
楽毅や孟嘗君等とうまく対比させた人物として描かれていて、なんとも示唆に富んだ書き方をされています。
後半は、「斉」に復讐をしたい「燕」の「昭王」に招かれ、そのたぐいまれな軍才を思う存分に発揮します。
弱国である燕が超大国である斉に復讐するため、楽毅が次々と手を打ち、斉を追い詰めていく様にはワクワクさせられます。
前半と後半両方にクライマックスがあり、2度楽しめるのもこの作品のいいとこですね。
9位「黄砂の籠城」松岡圭祐
一九〇〇年春、砂塵舞う北京では外国人排斥を叫ぶ武装集団・義和団が勢力を増していた。暴徒化して教会を焼き討ち、外国公使館区域を包囲する義和団。足並み揃わぬ列強十一ヵ国を先導したのは、新任の駐在武官・柴五郎率いる日本だった。日本人の叡智と勇気を初めて世界が認めた、壮絶な闘いが今よみがえる。
※黄砂の籠城(上) (講談社文庫)より引用
中国の義和団事件(日本の明治維新後の時代)を扱った珍しい小説。
なんか世界史の授業で聞いたことあるなーレベルだと思います。
それがこんなに面白く描かれるとは!
当時の国際情勢がよくわかります。
何より、この小説の魅力は、日本人の理知的で勇気ある行動に感動させられちゃうところ。
ミステリーが本文の著者らしく、ミステリー要素がちりばめられてるのも読みどころです。
10位「史記」司馬遷
聖王伝説の時代から殷・周を経て、春秋末期を復讐劇で彩った呉越の死闘まで。徳治の黄帝に暴君紂。周草創期の文王と太公望。斉の桓公、秦の繆公。宋の襄公、晋の文公、楚の荘王ら春秋五覇。その他、会稽の恥を雪ぐ句践、伍子胥・范蠡ら多士済々。
※史記(1)覇者の条件 (徳間文庫)より引用
全巻の武帝の時代に、司馬遷が書きあげた中国の通史。
伝説上の時代から司馬遷が生きた時代までが描かれています。
「古代中国の全てを知ることが出来る」といっても過言ではない本。(小説と言っていいかは微妙なとこですが…)
中国の歴史に興味がある方は是非!
様々な故事が沢山出てきて面白いですよ。
11位「太公望」宮城谷昌光
羌という遊牧の民の幼い集団が殺戮をのがれて生きのびた。年かさの少年は炎の中で、父と一族の復讐をちかう。商王を殺す。それはこの時代、だれひとり思念にさえうかばぬ企てであった。少年の名は「望」、のちに商王朝を廃滅にみちびいた男である。中国古代に会って不滅の光芒をはなつこの人物を描きだす歴史叙事詩の傑作。
※太公望〈上〉 (文春文庫)より引用
殷王朝から周王朝への交代期について、周の軍師である太公望の視点で描かれた小説。
「なぜ太公望は殷王朝打倒に生涯を捧げたのか?」という物語の根幹となる部分がしっかりと描かれています。
太公望の仲間たちのキャラ付けもしっかりしていて、皆が苦難を乗り越えて成長していく様にハラハラドキドキさせられる等、ついつい感情移入させられます。
そして、仲間たちと共に殷王朝打倒に向けて次々と手をうち、太公望がまさに徒手空拳といってよいところから、殷王朝を左右するだけの力を得ていく様は痛快そのものです。
この作品の大きな特徴が、単純な勧善懲悪ものではないというところ。
通常、殷の紂王を描いた場合、妲己という愛妾に溺れ、酒池肉林(贅の限りを尽くした酒宴)や炮烙の刑(業火で熱した円柱に罪人を縛り付けて殺す刑)等、暴虐の限りを尽くした暴君として描かれます。
しかし今作では、むしろ紂王は合理的な改革者として描かれており、今までとは全く違う紂王像がそこにはあります。
「悪いやつは悪い!」と思考を停止するのではなく、当時の宗教観や価値観、社会情勢等をしっかり踏まえた上で、「なぜ紂王は国を失ったのか」が描かれています。
そのあたりの描き方が絶妙でかつ詳細を極めており、物語に深みとリアル感を出していて、非常に面白い作品になっています。
12位「天空の舟」宮城谷昌光
商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝への革命を成功にみちびいた稀代の名宰相伊尹の生涯と、古代中国の歴史の流れを生き生きと描いた長篇小説。桑の木のおかげで水死をまぬがれた〈奇蹟の孤児〉伊尹は、有しん(草かんむりに辛)氏の料理人となり、不思議な能力を発揮、夏王桀の挙兵で危殆に瀕した有しん氏を救うため乾坤一擲の奇策を講じる。新田次郎文学賞受賞作。
※天空の舟―小説・伊尹伝〈上〉 (文春文庫)より引用
まだ実在していたか確認されていない伝説上の王朝「夏」から「商」王朝(殷とも呼ばれる)への交代期を、「伊尹」という半ば伝説上の人物を通じて描いた小説。
そんな圧倒的に資料が不足している「夏」→「商」の時代について、全く知らない人でも親しめるように描かれた小説です。
「地面に呪いをかけられたら、その穢れを払わないと足を踏み入れることが出来ない」とか、「邑(街のこと)に入る時は門から入らないと災いにあう」等、この時代の人々の価値観や宗教観を楽しみながら知ることが出来ます。
その世界観で「伊尹」という主人公がとても魅力的に描かれています。
特に湯(商の君主)に三顧の礼で迎えられ、水を得た魚のように自らの能力を発揮する様なんか特に良いです。
未開の時代を圧倒的な筆力で見事に描き切った名作ですよ。
【ヨーロッパ】おすすめ歴史小説ランキングTOP8!
1位「ローマ人の物語」塩野七生
前753年、一人の若者ロムルスと彼に従う3千人のラテン人によりローマは建国された。7代続く王政の下で国家としての形態をローマは整えてゆくが、前509年、共和政へ移行。その後、成文法制定のために先進国ギリシアへ視察団を派遣する。ローマ人は絶頂期のギリシアに何を見たのか―。比類なき大帝国を築きあげた古代ローマ。その一千年にわたる興亡の物語がいま幕を開ける。
※ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)より引用
「なぜローマ帝国はあれほど広大な領土(ヨーロッパの半分とアフリカ北部と中東西部)を、何百年にもわたって維持できたのか?」という視点で、ローマの建国から滅亡までが描かれています。
こんなに面白く、かつ勉強になる歴史小説が今まであったでしょうか?
いや、ない!!
何度も何度も「なぜ?」が繰り返されており、1つ1つの出来事がなぜ起こったのか?どういう結果につながったのか?等がとてもわかりやすく描かれているんです。
なので、面白いだけじゃなく、ローマという国家の成り立ちからローマ人の価値観まで、非常に簡単に頭に入ってくるんです。
世界史の教科書を読むよりも何倍も勉強になりますし、しかも比較にならない位面白い!
まだ読んでないって方はお願いなので読んでみて下さい。
全部で43巻もありますが。
読み終えたら、続編の「ローマ亡き後の地中海世界」もどうぞ。
2位「十字軍物語」塩野七生
長くイスラム教徒の支配下にあった聖都イェルサレム。一〇九五年、その奪還をローマ法王率いるカトリック教会が呼びかける。「神がそれを望んでおられる」のスローガンのもとに結集したのはキリスト教国の七人の領主たち。ここに第一次十字軍が成立した。さまざまな思惑を抱えた彼らは、時に対立し、時に協力し合いながら成長し、難事を乗り越えていく。ビザンチン帝国皇帝との確執、小アジア横断、大都市アンティオキアを巡る攻防…。そしてイェルサレムを目指す第一次十字軍の戦いはいかなる結末を見たのか―。
※十字軍物語〈1〉より引用
世界史の授業で「十字軍というのがあった」位しか知らなかった十字軍。
それを日本人らしく、どちらにも肩入れせずに客観的に描いてあるのが良いんです。
塩野先生らしく、細かい部分までわかりやすく描かれているので非常に面白い。
「誰がリーダーだったのかな?」とか「食料どうしてたの?」とか「何で小勢だったキリスト側が勝ったの?」とか。
あと戦記物としてもすごく面白い。
大都市アンティオキアを巡る攻防とか。
ページをめくる手が止まらなかったよね!
めちゃめちゃデカいハードカバーなので持ち歩くには重すぎますが、超おすすめです。
3位「怪帝ナポレオン三世」鹿島茂
偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝。
※怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)より引用
ナポレオン三世って知ってます?
あの有名なナポレオン・ボナパルトの甥っ子で、フランスの皇帝になった人物です。
ナポレオン・ボナパルトの七光りで皇帝になった凡庸な人物として語られがちですが、実は違うんだよということを描いた小説。
「どうやって皇帝までのぼりつめたのか?」「どのようにして今のような美しいパリを作り上げたのか?」「ナポレオン三世の統治方針とは?」等、興味深い内容が次々と描かれていきます。
これが中々面白いんですよ。
自分なりの理想を追い求めて闘い続けたナポレオン三世、その激動の生涯を詳細に、そして深い愛情をもって描いた隠れ名作です。
4位「ジハード」定金伸治
時に12世紀。欧州諸侯は主の名の下に、聖地奪還の師を出した。燎原の火の如く押し寄せる大軍を前に、瓦解寸前のイスラム勢力を結集して立ちはだかるは、英雄王・サラディン。その幕下に“キプロスの痴人”と呼ばれる西欧人の青年・ヴァレリーが身を投じ、王妹エルシードと出会う時、激烈なる聖戦の幕が上がる―!
※ジハード 1 猛き十字のアッカ (星海社文庫)より引用
「歴史小説」の枠に入れてよいのかちょっと悩みました。(ファンタジーかな?と)
十字軍時代をイスラム側から描いた小説なんですが、歴史的な部分よりも個々のキャラクターにスポットライトをあてた小説。
爪を隠した天才ヴァレリーと火の玉のような性格の王妹エルシード、そして仲間たちの軽妙な掛け合いのおかげで読みやすさ抜群です。
あと聞いたことある歴史上の人物がちょこちょこ出てきますしね。
それでいて重い話が随所に入れこまれていたり、手に汗握るような展開があったりと、どのジャンルにも属さないような不思議な立ち位置の作品です。
5位「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」塩野七生
十五世紀末イタリア。群立する都市国家を統一し、自らの王国とする野望を抱いた一人の若者がいた。その名はチェーザレ・ボルジア。法王の庶子として教会勢力を操り、政略結婚によって得たフランス王の援助を背景に、ヨーロッパを騒乱の渦に巻き込んだ。目的のためなら手段を選ばず、ルネサンス期を生き急ぐように駆け抜けた青春は、いかなる結末をみたのか。
※チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)より引用
当時分裂状態だったイタリアを統一しようとした男の生涯を追った小説。
冷酷非道な謀略にも手を染め、憎まれると同時に恐れられてもいた男。
にも関わらず、もしこの男が夢を叶えていたら…と妄想せずにはいられないほどの魅力を放っています。
強いて日本で例えるならば、信長に近いかもしれません。
気取ったタイトルのインパクトを上回る面白さです。
6位「海の都の物語」塩野七生
ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、一千年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国。外交と貿易、そして軍事力を巧みに駆使し、徹底して共同体の利益を追求した稀有なるリアリスト集団はいかにして誕生したのか。ヴェネツィア共和国の壮大な興亡史が今、幕を開ける。
※海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)より引用
1,000年という長きにわたってイタリア半島で独立を保ったヴェネツィア共和国を描いた小説。
ヴェネツィア共和国を1つの人格としてみなして描くという、「ローマ人の物語」とは違う手法で描かれています。
そのため、ワクワクさせるような英雄は1人も現れません。
しかし、それでも全く退屈せず、むしろヴェネツィア共和国が成長していく様がとても面白いんです。
この本を読むと、恐らくヴェネツィアに行ってみたくなるはず(笑)
あと、政治家に読ませてやりたくなります。
7位「フランツ・ヨーゼフ:ハプスブルク最後の皇帝」江村洋
もはやハプスブルク家の光も消えかけようとした一九世紀後半、「一致団結して」をスローガンに、ひとりの皇帝が現れた。その後、六八年の長きに渡って帝位を守り続け、王家の復活を夢見続けたその男、フランツ・ヨーゼフ―しかし、運命の輪は彼を翻弄し、次々と悲劇に襲われる。帝都ウィーンの光と影とともに、ハプスブルク家の落日を描いた本邦初の傑作評伝。
※フランツ・ヨーゼフ: ハプスブルク「最後」の皇帝 (河出文庫)より引用
第一次世界大戦時、オーストリア・ハンガリー帝国はドイツ側として参戦しましたが、その時の皇帝こそが「フランツ・ヨーゼフ」。
フランツ・ヨーゼフは、英雄でもなく、奇人でもなく、普通の人。
そんな彼が、民主主義や民族主義で揺れる帝国の皇帝となり、帝国を維持しようと、真面目に、熱心に取り組む。
その姿を余すところなく描いた小説。
彼が英雄ではないからこそ、あまりにもリアルな皇帝の姿が浮き彫りになっています。
最善を尽くそうとした男の生き様を、じっくりと味わえる1冊です。
8位「カール五世:ハプスブルク栄光の日々」江村洋
この男をもって、ハプスブルク家は最盛期を迎える。若きスペイン王として君臨し、皇帝の冠を抱いたのちは、ヨーロッパだけでは飽きたらず、アフリカにまでその手を伸ばした戦いと栄光の日々。しかし、王家と自身の黄昏は、静かに忍び寄っていた―。ハプスブルク家が光に満ちた最後の姿を描いた傑作評伝。
※カール五世: ハプスブルク栄光の日々 (河出文庫)より引用
「スペイン王と神聖ローマ帝国の皇帝を兼ね、太陽の沈まぬ国と呼ばれるほどの広大な領土を誇った。」と世界史の教科書なんかで記述されているカール五世。
カール五世の生涯を通じて、その栄光に満ちた部分と、徐々にスペイン帝国が衰退していくきっかけとを描いた小説。
「何でこんなに広大な領土になったの?」「何でこんなに領土広いのにあっという間に衰退していったの?」ってところが気になったので手にとってみました。
あまり馴染みのない時代ですが、非常にわかりやすい文章で書いてありますので余計な心配は無用です。
気になっていたところがとてもよくわかります。
今作でハプスブルク家の絶頂期を読み、その後に上記の「フランツ・ヨーゼフ」でハプスブルク家の崩壊を読むと、より深く楽しめますよ。
以上、おすすめの歴史小説たちでした!
大分長くなってしまってすみませんでした。
ついつい愛情が溢れ出してしまって…
改めて振り返ってみると、北方先生が7冊、宮城谷先生が5冊、塩野先生が4冊。
偏りまくってますね、これ。